このブログを開設してから17年、現在のドメイン(yagi.tc)を使い始めてから12年になりますが、マイナーccTLDということもあり、相次ぐ値上げと運用上の制限が気になるためにドメイン移転をすることにしました。ものはついでで、どうせ301リダイレクトを設定するのならブログのパーマリンクもより運用しやすいものに変えようと考えました。
しかしブログに適したパーマリンクについて日本語でいろいろ調べてみても、SEOに有利かどうかについて書かれたエントリしか見つからず、しかもその内容もそれぞれ根拠のない内容を扱っているだけで、ベストプラクティスのようなものは存在しないようでした。それならひとつ自分が情報を整理してエントリに仕立て上げてみようと思い、ここにまとめることとします。
1. このエントリの前提
前提として、個人が所有するブログのパーマリンクに主眼を置くこととします。分野をあまり絞らないパーソナルな内容で、長期間の運用をし、独自ドメインを持ち、WordPressなどのCMSでパーマリンクを選ぶときに、ハテどうしようかと悩んでいる私のようなひとのための検討材料です。
近年は「URL」のことをより広い集合である「URI」と呼ぶこともありますが、このエントリではブログのパーマリンクを主眼にしている意味合いから「URL」で統一しています。
また、コンテンツのURL全般を指す場合は「URL」、ブログやその他コンテンツが一意に持つパーマリンクのみを指す場合は「パーマリンク」と呼んでいます。
2. 参考資料と現状認識
コンテンツのURLについては検索エンジンGoogleによってガイドラインが公開されています。
コンテンツに関するガイドラインhttps://support.google.com/webmasters/topic/4598733?hl=ja
ざっくり「シンプルかつ論理的で可読性のあるURLにしなさい」と書いてあります。そのためにコンテンツに対して一意であることが望ましく、IDを使用するよりは意味のある単語を使用した方がよいようです。
もうひとつ参考になるのは、Googleのサービスの一つであるGoogle Cloud Platformが公開したAPI設計についてのブログエントリです。
API design: Choosing between names and identifiers in URLshttps://cloudplatform.googleblog.com/2017/10/API-design-choosing-between-names-and-identifiers-in-URLs.html
これは人間が理解するブログではなくコンピュータが理解するAPIのための内容ですが、両者に共通する思想を持っているために、上記のガイドラインよりも一歩踏み込んだ内容として手本となります。
ざっくり内容を紹介すると、例えば
https://ebank.com/accounts/a49a9762-3790-4b4f-adbf-4577a35b1df7
のようなIDを使用したフラットな構造のものと
https://library.com/shelves/american-literature/books/moby-dick
のような分類による階層構造を伴うものとあり、両者にはトレードオフが存在し、より好ましいのは後者のように見えるが、一概にそうだとは言えないということが書かれてあります。そして、前者はパーマリンクとして、後者は検索のために使用して両立させるという例が挙げられています。
実際のブログのパーマリンクの主流はどのようなものでしょうか。もっとも使用されているCMSであるWordPressでは、規定値のパーマリンクは
https://example.com/?p=1
のような形式になっています。他に、日本でもっともユーザ数の多いブログサービスであるLivedoorブログでは、
https://example.com/archives/52017243.html
のような形式になっています。いずれもエレガントとは言えないようです。
3. エレガントなパーマリンクとは
では「エレガント」なパーマリンクって何なのでしょう。突き詰めるととても主観的な話になってしまいますが、基本的にはGoogleのガイドラインにある「シンプルかつ論理的で可読性のあるURL」でよいと思います。そこに私は「運用が単純であるURL」を加えたいと思います。この重要性については後述します。
これらの各要素を順番に確認していこうと思います。
3-1. シンプルさと可読性を両立させるURLとは
まずはGoogleのガイドラインにある「シンプルかつ論理的で可読性のあるURL」を見ていきます。
3-1-1. シンプルさを優先する(短縮URL)
もしこれを「シンプルかつ論理的」の方向に突き詰めるとどうなるのでしょう。
Twitterで使用されている短縮URLサービス「t.co」の例です。
https://t.co/nEDMKlFpP4
人間にとってたいへん読みにくいことを除けば「シンプルかつ論理的」であると言えるでしょう。冗長な部分を廃してもっとも短く、かつ一意になるURLです。短いことの利点は単純で無駄がないことです。保存に場所をとらず、通信するのも短時間で終わります。(あくまでURLは、の話です)
このURLが生きるのはもちろんTwitterです。Twitterは一投稿あたりの文字数に厳しい制限を課しています。どのような長いURLであっても、URLが投稿に収まりきらないということはこれでなくなりました。素晴らしいですね。
URLが短いことの利点はモバイル環境でも発揮されます。これは短縮URLサービスを指した話ではなく、URLが短いこと自体についてです。モバイル環境ではブラウザのアドレスバーに表示される文字数が限られるため、より少ない文字で収まるURLであれば、人間にとって認識できる情報量が増えます。
(※ただし認識できても理解できるかどうかは脇に置きます。短縮URLサービスでは本来URLから推測できる情報が欠落するため、フィッシングサイトの温床になっている現実があります)
短縮URLサービスではなく、そのサイトのパーマリンクを「人間が理解できないほどシンプル」にしている例として以下があります。
YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=3RDYVVmVR2U
実のところ冗長であまりシンプルとは言えませんが、投稿された動画がいくつになろうと対応できる柔軟性と、それでいてURLの長さがほぼ変わらない安定性を持っていることは特筆すべきです。私ならもっと短縮URLチックに「https://youtube.com/3RDYVVmVR2U」とするところです。
Qiita
https://qiita.com/toyoshi/items/f40e6440e50b3fc5ccd9
こちらもやや冗長ですが、エントリのハッシュ値をとって擬似的に一意にするという発想は特筆すべきです。同様の例にはGithub Gistがあります。
Github Gist
https://gist.github.com/toriwasa/7e1464d8050a596705793770fe158234
16進数のハッシュ値よりさらに短くできるBASE64で良いのではないかと思いましたが、URLのルール上「/」が含まれてしまうのが微妙なので16進数で手を打っているのかもしれません。
Evernote 共有ノート
http://www.evernote.com/l/ABANAls7iwVNvokclFwn2Vb-1jP8QVjXAsP/
人間の理解を一切考慮せずBASE64的なURLにしており、たいへん合理的です。Qiitaに比べて衝突可能性も格段に低いと思われます。
3-1-2. 可読性を優先する(冗長なURL)
上記の通り、シンプルで論理的なURLを追求すると人間の理解が難しい文字列になります。このため、たとえ短くても人間がコピー&ペースト以外で手打ちしたり読み上げたりする場合は大変です。多少冗長であれば手打ちや読み上げ時に間違いがあってもエラー訂正が可能ですが、人間の理解ができないURLでは訂正を期待できません。
そこでスラッグ(slug)を使うという方法があります。私のブログはこの形式です。
yagi.tc
https://yagi.tc/archives/2017/10/16/always-on-ssl/
上記の例では“always-on-ssl”の部分がスラッグで、全エントリ中一意になるようになっています。つまり設定を変えて、もっとシンプルに
https://yagi.tc/always-on-ssl/
とすることもできます。ある程度シンプルかつ論理的な形を保ったままで人間に理解しやすい形にするというバランスの取れた解決策です。URLから内容が推測できるため、Google Analyticsなど、配下のURLを大量に認識する必要がある場合にとても役立ちます。
ただしスラッグの難点は、タイトルとは別にいちいち設定する必要があることです。もし英語圏の人がエントリを書いたなら、自然とタイトルや本文はASCIIに収まるのでスラッグを設定しやすい(何なら自動で設定させても良い)のですが、ASCII以外の文字(マルチバイト文字)を使う文化圏の人にとってはどうでしょうか。
WordPressでスラッグを有効にした場合、他に何もしなければタイトルの前から何文字かが自動でスラッグになります。日本語で書けば当然マルチバイト文字になります。困ったことに、スラッグがマルチバイト文字で設定され、URLもマルチバイト文字を含む形になった場合、URLエンコード(パーセントエンコーディング)が発生します。エンコードされたURLはとても長くなり、人間の理解ができない形になります。Wikipediaのパーマリンクがよい例です。
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B0
URLエンコードされる前は「https://ja.wikipedia.org/wiki/スラッグ」となりますが、このページを表示してアドレスバーからこのURLをコピー&ペーストした場合、ブラウザによってコピーされる文字列が異なります。Chromeなら「https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B0」が、Edgeなら「https://ja.wikipedia.org/wiki/スラッグ」が入ります。
このように表面的にはマルチバイト文字はきちんと表示されても、内部的にはエンコードされた文字列になるので実装がまちまちで、とても厄介です。はじめからASCIIに収まる形にした方がよさそうです。しかしタイトルも本文も日本語なのにスラッグをどうやって付けるのでしょうか。
たとえばタイトルの日本語が「このサイトを常時SSL化しました」なら「konosaitowo-joujisslka-shimashita」にすればよいのでしょうか。これだと可読性に乏しく、URLエンコードされた文字列とあまり変わりませんね。おそらくスラッグを使っている多くの人は英単語を利用して設定していると思います。
でも内容が日本語なのにわざわざ和英辞書を引いて英単語のスラッグを付けるなんてちぐはぐで、ちっともエレガントじゃありませんよね。もしかするとQiitaがハッシュ値を利用しているのも、内容がマルチバイト文字であることを前提にこうした仕様にしているのかもしれません。
これについての解決策は特に思いつきません。私たちはエントリを書くたびに和英辞書を引くか、自動でID番号やハッシュ値が設定されるようにするかの、どちらかの(あまりエレガントではない)選択肢を選ぶしかなさそうです。
ASCII文字以外を用いる言語圏のサイトを少し見てみましたが、ロシア語では英単語で代替、フランス語やスペイン語では発音区別符号を無くした母国単語と英単語の混在などの形にしているようです。
3-2. 長期的な使用に耐えるURLとは
ブログのパーマリンクについてSEO的にどのようにすればよいか書かれたエントリは多数ありますが、正反対のことを主張する二つの勢力に分かれているようです。それは「カテゴリをパーマリンクに含めるか否か」です。
WordPressのパーマリンク設定を変更して、SEOや日本語URLの対策をしようhttps://liginc.co.jp/web/wp/customize/148458
http://トップレベルドメイン/カテゴリー名/投稿名(英数字)
「http://liginc.co.jp/web/wp/custmize/145732」という形ですね。
パッと見ただけでも、Web関連でWordPressのカスタマイズにまつわる記事なんだろうな、ということが想像できるようになりました。
結論から言うと、おおむね上のようなパーマリンク構造が理想的です。
【WordPressのパーマリンク】おすすめの設定と理由https://fujimotoyousuke.com/2017/01/wordpress-permalink-setting/
パーマリンクにカテゴリ名を入れたほうが良いという人もいますが、わたしはおすすめしません。
二つの勢力に分かれているだけあって容易に解決できる問題ではないのですが、私は「カテゴリをパーマリンクに含めるべきではない」という立場をとります。なぜならカテゴリは(少なくともブログのパーマリンクとしては)長期的な使用に向かないと考えるからです。
以下ではそれについて触れていきます。
3-2-1. 階層構造の弱点
Google Cloud Platformのブログエントリでは、
https://library.com/shelves/american-literature/books/moby-dick
のような分類による階層構造を伴うURLが示されています。見たところ分かりやすいURLですし、実際インターネット上でもっともよく見るタイプのURLだと思います。
ところがパーマリンクは「Permalink」の文字通り、恒久・不変である必要があります。困ったことに、こういった分類というものは途中で弄りたくなるものです。動植物の分類学でしょっちゅう変更があるように、「このページはこっちだったけど、あっちでまとめた方が良さそうだな」みたいなことが起きる可能性があります。これは長期的に運用すればするほど高まります。
もちろんそういった場合のために、301リダイレクトという方法があります。しかし細かい話をすると、そのマッピングがあることで運用コストはどんどん上がっていきます。初めから無いに越したことはありません。特に私の場合何度かの移転を経てマッピングが膨大で、これ以上増やしたくないのです。
はじめに前提条件として「個人が所有するブログのパーマリンクに主眼を置く」と述べました。個人が所有するブログである以上、私のように十数年と運用していると興味関心がどんどん変わっていきます。その都度ブログを作るのも良いですが、私は文章のはけ口を一箇所にしたいのです。もしそういう場所でカテゴリ分けをするのであれば、なるべく長期間それが機能するものでなければなりません。この教訓は私が10年以上前、このサイトをブログに再構成したときに作ったカテゴリが現在は機能していないという事実に基づくものです。
3-2-2. 階層を廃したURLとは
ではカテゴリを使用しない場合、どのような形が「エレガント」なのでしょうか。
私のブログのパーマリンクについて再掲します。
yagi.tc
https://yagi.tc/archives/2017/10/16/always-on-ssl/
これをよりエレガントにするには2つの方向性があります。一つはスラッグのみにしてしまうことです。
https://yagi.tc/always-on-ssl/
内容について推測ができ、それでいてシンプルです。階層構造が一切ないので、スラッグを設定する名前空間に気を付ける必要があります。(サイトの連絡先が書かれた重要なページも、ただの一エントリも同じ階層に所属することになります)
気を付けなければならないのは、Movable TypeのようにHTMLファイルをパブリッシュ(出力)するタイプのCMSでは、一ディレクトリの直下に大量のファイル(またはディレクトリ)が存在することになるため管理が煩雑になります。なのでこれはWordPressのようなタイプのCMSに向いています。
もう一つはタイムスタンプのみにしてしまうことです。
https://yagi.tc/2017/10/16/
または
https://yagi.tc/20171016/
スラッグではないので内容については推測できませんが、ブログは時系列で更新していくので割と理にかなっていると思います。特にテクノロジーなど陳腐化の激しい分野を扱う際、URLから書かれた時期を把握できることは重要です。(テクノロジー系のブログエントリなのに書かれた日付がどこにも表記されてなくて怒りに震えることはよくあることです)
難点は、この形式では一日に最大一エントリしか扱うことができないことです。時刻の2桁まで入れれば一時間に最大一エントリになりますが、パッと見てそれが時刻であると認識できる人は少ないと思いますので、思い切って時分秒まで入れた方が良いかもしれません。
https://yagi.tc/2017/10/16/12/00/58/
または
https://yagi.tc/20171016120058/
作家の結城浩さんは自らの文章をまとめるのに以下のようなURL形式にすることを検討しているようです。
以前から結城はタイムスタンプを使った14桁の数が大好きです。 14桁の数というのは「2017年10月31日12時34分56秒」なら、 20171031123456のことです。
いろんな文章をネットのあちこちに書いていても、 作成日時をもとにした14桁の数ならば、 散らばらずにぎゅっと集約できます。 そして、
hyuki.org/20171031123456
のような形で、自分の活動へのリンクとできないだろうか。 結城は「仕事の集約」をそんなイメージで描いているのです。
(結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年10月31日 Vol.292)
同じ形式ですね。
なお、一般的にはスラッグの代わりにエントリIDを用いたパーマリンク
https://example.com/789/
または
https://example.com/?p=789
も見かけますが、万が一CMSを変更した場合にIDが変わる可能性があることから、あまり推奨できません。
3-2-3. バージョン番号を付ける構成
APIでよくあるURIにバージョン番号を付けたものがあります。
https://www.googleapis.com/upload/drive/v2/files/fileId
これを応用すればバージョン番号ごとに異なるパーマリンク体系を採用できるので長期間の運用に耐えられるのでは……と思いましたが、結局後方互換性を残すために全バージョンでCMSを運用し続けないとパーマリンクとして機能しないので、運用コスト的に現実的ではなさそうですね。HTMLファイルをパブリッシュするタイプのCMSではアリかもしれません。
3-3. より踏み込んだ議論
長期間の運用を前提にする場合、上記以外にもパーマリンクを構成する要素はなるべく普遍的なものを使用するのが良いと思います。
以下は要素として挙げるのみで、具体的な議論は行いません。
- 自然言語の選択
- マークアップ言語の選択
- https://example.com/example.html より https://example.com/example/ が好ましいです
- 現在はHTMLですが、XML等の形に置き換えられる可能性があります
- ドメインの選択
- ランニングコストが安く、メジャーなgTLD/ccTLDが適しています
- サーバ運用上/メールアドレス運用上、タイプする量が少ない方が好ましいです
- サブドメインの選択
- https://www.example.com/ より https://example.com/ が好ましいです
- スキームの選択
- 現在はhttpからhttpsに移行しつつありますが、ポストhttpsが今後出てくる可能性があります
4. おわりに
長くなりました。
結論としては、スラッグ形式とタイムスタンプ形式を組み合わせた以下のような形式でいこうと思います。
https://yagi.tc/2017/always-on-ssl/
以上