技術同人誌の表紙で得たもの、失ったもの

2018年12月11日

この記事は「技術同人誌 Advent Calendar 2018」の11日目です。

今年の技術書典5にて初めて同人誌を出しました。同人誌を出すまでの経緯、頒布時の体験などは既に記事にした通りなのでここでは特に語ることはせず、後々まで後悔が残った「表紙」についての反省を書こうと思います。

この表紙画像を見ていただければわかる通り、とあるメディアミックス作品の人気キャラクターが使われています。この表紙には、

・権利者の許諾を得ない二次創作の画像を使用している
・画像が内容と無関係

の、大きく2つの問題点があります。
(ついでに言えばオライリーのパクリでもあります)

順に説明していきましょう。

二次創作画像を使用することについて

日本のいわゆる二次創作同人作品は、歴史的な経緯もあり権利者の許諾を得ずに創作・頒布することが広く行われています。大きな同人誌頒布会から小規模なものに至るまで、様々な条件つきで半ば公然に認められてきました。私はこうした同人世界に深く入ったことがないので過去の経緯や現状のボーダーラインの機微には通じておらずあまり詳しくは書けませんが、「同人」といったときにメインストリームとして「二次創作」という一ジャンルがあり、「技術書」や「オリジナル創作」と並ぶ位置で一大勢力があるということは誰もが認めるところでしょう。そして当然ながら、それは権利者の現状容認というグレーゾーンあってのものです。

一方で技術書というジャンルの話をしますと、こちらはそういったグレーゾーンがなくとも成立するジャンルです。実際に出回っている技術同人誌を見ても権利関係はクリアです。表紙にアニメっぽい絵が使われている場合でもそれはオリジナル創作です。なぜなら本の内容自体が権利的に問題ないものであるために、わざわざ表紙に二次創作といった権利の微妙なものを採用する理由がないからです。

ちなみに、もし二次創作の画像をお金を払って誰かに書いてもらったとしたら商業利用としておそらく権利者は黙っていないと思います。こうなるとグレーゾーンではなく完全にクロになります。(この点ではこの画像は自分で描いたものなので問題にはなりません)。

内容と関係ない表紙を採用することについて

さて、技術同人誌界隈では私以外にも少数ながら二次創作の画像を採用した本の例があります。(万一延焼したら困るのでハッキリと名は挙げません)。しかしながらそうした本にはその画像を採用する理由があります。すなわち「内容が表紙と関係している」ということです。ガルパンの本ならガルパンの内容を踏まえた技術書になっていますし、艦これの本なら内容にきちんとキャラクターが登場しています。しかし私の本にはそれがありません。作品のキャラクターが出てくるでもなく、本文中にイラスト一つ見当たりません。これは詐欺と言って良いと思います。

すべての技術書が表紙と内容が連動するべきと言うつもりはありませんし、むしろ可愛いオリジナルキャラクターの描かれた表紙は堅いイメージを和らげ、手を取りやすくするために効果的であると言えます。しかしイメージを和らげるために虎の尾を踏む(=権利関係がグレーなものを採用する)必要まではありません。存在がそもそもグレーゾーンな二次創作ジャンルと違って、安全地帯にいる人がわざわざ危険を侵しにいくのは愚かとしか言いようがありません。

さらに、この本のように誤認を狙うかのようにあざとい表紙にすることは、読者や手に取る人を見くびっているとも言えます。もし表紙によって手にとったとしても内容が伴っていなければ、それは伝えるための誠実さを欠いています。表紙買いして失敗したと思っている人がいたらどのように申し訳が立つと言うのでしょうか。

なぜこうなってしまったのか

さて、ではなぜこのような意味不明な表紙を採用した技術同人誌ができあがったのでしょうか。

【弁明1】とにかく目につけば売れると思った
【弁明2】みんながやってるからなんとなく(二次創作界隈を見ながら)
【弁明3】締め切り間際でそこまで頭が回ってなかった
【弁明4】普段二次創作しか描いてないのでオリジナルを描く技量がなかった

主に弁明4が大きいです。表紙買いで失敗したなと思われた方にはこの場を借りて深くお詫び申し上げます。

おわりに

みなさんも、このような失敗をしないように表紙はよく考えて採用しましょう。この表紙で得たものは教訓とこのエントリのネタ。失ったものはクリアな権利関係とお天道様の下を堂々と歩ける権利でした。

次回はちゃんとやろうと思います。

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