[書評]「豊かさ」の誕生

2016-02-06 15:51 | 書評 | § 0

「豊かさ」の誕生(上) 成長と発展の文明史 (日経ビジネス人文庫)
ウィリアム・バーンスタイン
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「豊かさ」の誕生(下) 成長と発展の文明史 (日経ビジネス人文庫)
ウィリアム・バーンスタイン
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文明が急速に発展するための条件が4つあると仮説を立て、近代史に照らし合わせて検証した本。

人間の歴史上、文明が急速に発展する時代を迎えている。例えば中世の時代に何か発明をしたとしても、それが各地に広まるまでは何十年何百年とかかっていた。生産性の上昇など何年かかってもほとんどなかった。それが今では比較にならないほどの進歩になっている。この過去と現在の間で、どの地点で科学進歩のペースがアップしたのかを考えると、どうやら1830年前後に行き着くらしい。著者はそのタイミングで何があったかを思考し、その前後で文明の急速発展に必要な4要素が揃ったのではないかと仮説を立てた。

4つの条件とは、

  • 私有財産制 …財産が没収されないこと
  • 科学的合理主義 …思考が宗教に縛られないこと
  • 資本市場の発達 …資金源があること
  • 輸送と通信の発達 …低コストのインフラがあること

である。

さらに近代史を紐解き、1830年前後に至らずとも4要素が成立していた例(17世紀オランダ、18世紀英国)を取り出して、どのように4要素が揃うことになり、実際にどのような成果をもたらしたかを述べている。一方で、大国でありながら4要素が揃わず文明を牽引するほどの発展を生みだせなかった例(フランス、スペイン)を取り出して、どのように結果が開いていったかも解説している。

例えば18世紀フランスは絶対君主国家で慢性的な財政不足で、度々徳政令が出されたことから資本市場が発達しなかった。また、国内が諸侯によって細かく領地分割されており、関税や通行税がかけられていたために輸送が発達しなかった。17世紀スペインでは異端審問の嵐で、科学的合理主義はまったく望めなかった。このように近代的な文明発展の足を引っ張っていた様々な要素があり、それを克服できたのが17世紀オランダや18世紀~19世紀の英国で、世界の覇者となり得たのだった。

この本の注目すべき点は、戦争や歴史に残る革命などがあったかどうかに関わらず、国が発展するかどうかを左右するのは国の制度設計であることを示したところにある。
4要素さえ揃っていれば、二度の大戦で焦土と化したドイツであっても一貫して高い発展・経済成長ができたのだ。この点は日本も同じだ。

この本は3部構成になっており、1部と2部は各国々を例に挙げて4要素により急速発展ができたか(あるいはできなかったか)を検証している。3部ではそれらをベースとして、各地域や国家の抱える現在の問題とその未来について分析している。

著者は元々投資アドバイスの本を書いていて、ハッキリとは言わないが各国(たとえばイスラム諸国や中国)が投資見込みがあるかどうかが挙げられているので、参考になるかも知れない。

とは言え、最後の第13章では結論として「人間の歴史上この200年間はほんの一瞬であって、今のような安定した成長は今後とも続くわけでは無いだろう」と言われて冷や水をぶっかけられるので、お気を付けて。

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