知識を扱うシステムのあり方とは

2005-05-23 04:04 | 雑記 | 知識を扱うシステムのあり方とは はコメントを受け付けていません。

MovableTypeWikiといったCMSが普及してきた。それが手伝ってか大量の情報を集積させ、個人あるいは多人数でそれを管理するということが急速に広がっている。人間は今、自分たちによって発明されたそのようなしくみから「大量の知識を扱うこと」について試されているのかもしれない。

「ナレッジマネジメント」という言葉がメジャーになってきた。IT用語辞典によると「個人の持つ知識や情報を組織全体で共有し、有効に活用することで業績を上げようという経営手法」と説明されている。「ナレッジ」つまり「知識」を有効に管理することの重要性がこの言葉の普及というかたちで表されているのだと私は思う。情報革命によって情報を集めることの重要性が認識されたが、それから10年経っておやおやただ集めるだけではダメだぞ、という流れになり、重要なのは単なる「情報」よりも「知識」なのだという考えに変わりつつあるのではないだろうか。

とりわけ急速に変化しているのはウェブに公開されている情報の扱いだ。ブログブームやはてな関連サービス(国内外のソーシャルブックマークサービス等含む)などが一例だ。これらは人々が情報あるいは知識をウェブに公開するということを加速させた。

ブログブームがもたらしたもの

たとえばブログに話題を絞ろう。数年前の個人ホームページブームはウェブ上にある情報を増加させたが、それは単なる情報の増加にすぎなかった。個人や企業はホームページを持つことで満足し、多くは「存在のアピール」以上のことはしなかった。しかしブログブームはそうではない。継続的に更新しないとブログはブログとしての価値を失ってしまうため、人々はブログにせっせと情報を流し込み“続ける”ようになった。別に全員が全員ではないが、ネット全体を見渡して個人サイトは以前よりもかなり更新熱が高まったようには感じないだろうか。

ブログブームでウェブに情報を流し込むことを覚えた人たちは、リアルのものを次々と公開された文書(あるいは画像など)にしていく。彼らが増え続ける限り、ウェブの情報は加速度的に増加していく。そこには個人ホームページブームの頃の「ようこそ!」「よろしく!」に終始した単なる存在アピールとしての情報ではない。日々更新される生きた文章は何らかの知識や感情、思想や文化などを形成している。それが存在アピールや備忘録のようなものであったとしても。

もっとも、研究機関の情報が多かった初期のウェブよりかは無駄な情報は多いかもしれない。しかし、幅広さという点では今日には遠く及ばないだろう。家の近くにあるエスニック料理屋が気になっているが、それについての情報を少しでも知りたい。そんなときにいくつかのキーワードを指定するだけでそれらの情報について簡単に知ることができる。これはウェブに情報を流し込んでいる人が全世界にたくさんいて、そのうちの何人かがあなたの家の近くに住んでいるためだ。

ブログブームは現実の情報をウェブに流し込む喜びを人々に印象づけ、ウェブの価値を高めるための大きな流れを作った。ウェブの情報はこれからもっときめ細かになるに違いない。

情報が集まったら、次は整頓だ

さて、ウェブに情報が蓄積されるようになると、次は管理の問題が生じる。いくら蔵書の多い図書館だって、目当ての本やジャンルがすぐに探し出せないのでは誰も使わない。混沌と言われるウェブの世界は混沌のままではあまりにも使いにくい。そのウェブの情報を取り出すために今いちばん使われているのはインターネット検索エンジンだ。ウェブに公開されている文書のうちキーワードにマッチするところをいくつもリストアップしてくれる。しかしこれは万能ではない。

大まかなしくみは単純だが、キーワードにマッチしなければ取り出すことができない。それを解決するのがタグだ。文書だけでなく画像や音声といったファイルやサブジェクトにキーワードのついたタグを付けて管理するというものだ。しかしこれにも問題は山ほどある。他にも方法はあるかもしれないが、今のところウェブの情報をきちんと整理するための万能の方法はまだ発見されていない。

ウェブの情報は増え続けている。そして人間の生産活動のうちウェブの情報を生産する割合も増えてきている。せっかく時間を割いて情報にしたのに、それがうまく取り出せなかったりして死蔵されてしまっては意味がない。あるいは、自分がせっかく情報にしているんだから誰かがそれを知らずに失敗したり、誰かがまったく同じように情報にする努力を払ったりしなくてもいいようにしたい。そういったことが「知識・情報を複数人で管理するシステム」を必要とした主要な原因の一つだと言える。そしてグループウェアやWikiといったツールが多くの人に必要とされ受け入れられたのだ。

そんなミクロ的なものだけでなく、ウェブという大きな世界の中でもそういった知識・情報を集めて統合的に管理しようという動きがある。最も分かりやすいのはWikipediaだ。ウェブに参加する人たちが自由に追加・編集できる百科事典という発想はそういった「混沌の情報を少しでも整理・管理しよう」という衝動からきたものだと言える。

百科事典に載っている情報は統合管理するのに最もふさわしいものだろう。そして、後を追うように他のプロジェクトも動き出すだろう。簡単そうなところではOS・ソフトウェア設定のTips事典や困ったときの対処事典、難しいだろうが報道に対するオピニオン事典などもできるかもしれない。それはJacoblogで提言されているような共同DBという発想そのものである。

整頓と混沌のはざまで

共同DBというものが登場したとしても、私はあまり乗り気ではない。情報を集積させるためにそういったサイトにせっせと書き込んでも面白くないからだ。それはなぜか。ブログを更新するのと違ってパーソナリティがなくなってしまうからだ。Wikipediaを編集したことがないので分からないが、編集した人がどういう人かは全然見えない。そしてパブリックなものが求められるので主観的意見を入れにくい。そして編集ルールが堅い。やはりブログが支持されているのは「俺の城」という感覚があるからなのだろう。そして、使い方にルールが無く好き勝手に使えるという自由感があるからだ。やはり情報を統合して集積させるというアイデアはごく一部でしか広まらないのではないだろうか。

やはり今のままではブログを使っている人の多くは知識の集積にブログを使い続けるように思う。統合されたサイトではないにしてもせめてウェブ全体としてきちんと管理できるようにするためには、

  • 場所が分散されていても文章ルールが独自流でも文書体系や内容を自動で分析可能にする(XML化やタグ化)
  • 検索エンジンをさらに高度にする(あいまいな検索や類語検索、インタラクティブな絞り込み指定など)
  • 共同DBの更新作業に何らかの楽しさを付け加える

などの改善が必要だ。だが既にXML化は進んでいるし検索エンジンも日進月歩の勢いで発展している。そして日本に限った話だが、2ちゃんねるなど巨大掲示板は更新(書き込み)が楽しいと同時に知識集積が実現されている(あまりにも自由すぎてデタラメや無意味文章が多いのが難点だが)。大量の情報を管理する手法は案外早期に実現するかもしれない。

私にできることがあるとすれば

私は情報や知識を便利に取り出せるように情報を集積した方がいいと考えているし、同時に混沌でもあるべきだと考えている。もともと私はきっちり分類・整理することが好きなのでずっとそういった分類・整理に労力を費やしてきたが、どうやらある程度で割り切らないと非効率的だぞということに最近気がついたばかりだ。MovableTypeを使い始めてから日々思いついたことを分類の必要なしにぽんぽん書き付けられる構造に衝撃を受けたし、巡回先のブログで唐突に毛色の違うエントリがあったりして面白かったりするので、そういったウェブの混沌さは保って然るべきだと思う。

私はウェブに情報や知識を公開しようというはっきりとした目的を持ってこのサイトを公開している。目的としてはメモ帳や備忘録、日記として使っているが、どこかの誰かが知りたいと思ったことを検索したときに自分の書いたテキストが出てきて喜んでもらえたらいいな、という素朴な考えが原動力だったりする。だから唐突に銀行ATMの取扱時間と手数料一覧表を公開したり、書評を公開したりしている。そして一つのテーマについてできるだけ1エントリで完結させ、必要であれば他のサイトへ誘導するリンクを張る。それが私の自己満足の形であり、金銭とか名誉とかそれ以上のものは望まない(Adsenseは導入してるけど)。私の想いは検索エンジンが補完してくれると信じているので、サイトの内容を特定のテーマに絞ったり、Wikiで体系的に管理したりしたいとは思っていない。そもそもブログツールは管理されるエントリのテーマの一貫性に目をつぶりながらも、管理する人の更新しやすさを重視している点で優れていて、それが故にブームとなりえたのだと考えている。

だから私はこれからも思いつくままに混沌の中にエントリを書き続けたいと思う。整理されていないことが即、使えない情報というわけではない。検索エンジンでたまたま来た人がそのエントリだけ見て帰っていく、そんな使われ方でいいと思っている。

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