続・交通事故・第二報「奇跡の価値は」

2004年11月17日

その事故は野暮用で友人宅に寄ったその帰り道、とある交差点で信号待ちをしているときに起きました。時刻は夜11時少し前、このあたりでは名物の夜霧が薄くかかって路面はしっとりと湿り、外気は吐く息も排ガスももうもうと白くなるほどの冷え込みでした。

俗に標準速度100kmと言われるT市の大動脈、西大通りと交差するところに赤信号で停止し猛スピードで左右に行き交う車をぼーっと眺めながら待っていたところ、突然後ろから大きな衝撃が。
一瞬意識が飛んだか動転したかで何がどうなったのか分かりませんでした。気が付いた時にはクリープ現象で自分の乗る車がするすると走り出していました。危ないと思ってすかさず急ブレーキを踏み、これは事故なんだと認識。
慌てて外に飛び出すと自車の後ろには無惨にへしゃげた2台の車が。まさしく玉突き事故です。そして先に飛び出していた、後ろの車(前から2台目)の運転手が惨状を前に呆然と立ってました。お互いの無事を確認し、彼にはすぐに携帯電話で警察を呼んでもらうことに。
3台目の車を見に行くと、ハンドルを持ったままの男の人が座ってました。目が開いてるのと外傷がないのを確認して「大丈夫ですか!」と声をかけてみます。反応がありません。ドアを叩いて声をかけるとようやく「大丈夫です」と落ち着いた声が返ってきました。
他に人が居ないことを確認して車の状況を一通り確認します。1台目の私の車は紺のコンパクト。2台目の車が後部にめりこんでいます。2台目の若いお父さんの車は車高の低い白のクーペ。前後の車に挟まれ見事につぶれ鉄の塊と化しています。3台目の20代後半のお兄さんの車はグレーのミニバン。衝撃の大きさを物語るかのようにボンネットがほとんどなくなり、シュウシュウと怪しげな音を立てています。2台目も3台目もどうやら自走できそうにはありません。
事故の状況を確認してみたものの、時間が経っても3台目の彼がまだ出てきません。もう一度「大丈夫ですか!」と声をかけるが「大丈夫です」と返すばかりでハンドルを握り正面をまっすぐ向いたまま動きません。「あの、もし火が出たりしたら危ないんで車から降りた方がいいと思うんですけど」とか何とか言ってるうちに何とか出てきてくれました。どうやら動転してる模様です。
その後彼は車から三角表示板を取り出して設置し(用意がいいな)、交通量の多い道路のため2人でしばらく交通整理をしていました。
やがて警察が到着。すでに事故経験があるためにもう戸惑うことはありません。すかさず免許証と車検証と自賠責保険証書を渡します。そして待っている間保険屋に連絡です。任意保険の証書を見てもコールセンターが分からず、104や本社番号など紆余曲折を経た後にようやくつながりました。番号くらい書いとけよ。
大規模な被害状況ということと、複雑な事故ということで警察車両3台と10人以上を動員し調査が進みます。その間ほとんど何もすることなく寒空の下白い息を吐きながらひたすら待つことに。その時点で分かったことは次の通りです。
・3台に乗ってた3人とも怪我はない
・信号待ちをしていた2台の車に3台目が後ろから追突し、玉突き事故になった
・追突された衝撃で先頭の車は停止線を越え、5メートル以上前進して停止した
・3台目の運転手は自殺しようとしていた
(続きます)
一歩間違っていたら死んでいたかもしれませんでした。