「さて、そろそろ反撃してもいいですか?」というフレーズで始まった今回のキャンペーン。ネット界隈を見るとあちこちで物議を醸している。
大前研一にこきおろされた 「そろそろ反撃」ドコモCM – J-CASTニュース
NTT ドコモのDoCoMo 2.0 自爆 CM「反撃してもいいですか?」の傲慢とカン違い – Heaven’s Net is Wide-meshed
これで「2.0」?Docomo2.0の謎 – Di
ドコモ2.0「さて、そろそろ反撃してもいいですか?」 – イミフ
みんなドコモに釣られすぎ(´ω`)
参考:
「ドコモ2.0」ってなんだ? “独り負け”王者反撃の合言葉 – ITmedia
NTTドコモ 辻村清行氏──「ドコモ2.0」に込めた本当の意味 (1/2) – ITmedia
蛇足:
変換すると「ドコモに移転ゼロ」になる!? 謎の「DoCoMo 2.0」
「そろそろ反撃」広告の嫌悪感のポイント
この広告に嫌悪感を持った人は次の2つのどちらか、または両方に注目している。
1.今さら「○○ 2.0」かよw
2.広告がコンシューマの方に向いておらず、自己満足的
1は「Web 2.0」に始まった2.0に辟易しているようなブロガー(≒ヘビーネットユーザ層)に圧倒的に多い。2はその中にちらほら混ざっている感じだ。1の指摘については「一般には知らない人が多く、実は今まさにちょうどいい」との意味不明な返答をしているのだが、賛否はともかく話題作りの一環として考えれば2.0キーワードの有効性は消えていないと考えたのだろう。ここまで堂々と大規模なプロモーションに敢えて「2.0」を据えていることからして、ネット界隈の失笑ブーイングの嵐は織り込み済みと考えていい。要するに、釣りだ。
このキャンペーンは他社に喧嘩を吹っかけているだけでなく、ネットのヘビーユーザでデジモノ好きでブログ書いててロジャーズモデルでは「アーリーアダプター」に分類されるような人たちにも喧嘩を売っているのだ。ネット界隈でこうした人を使ってキャンペーンを「炎上」させることで、見せかけのインパクトを与えようとしているのだ。十分なリテラシを持ったコミュニティでは炎上が即、悪評価につながるわけではないことを十分に見据えた上での決断だろう。
「そろそろ反撃」広告は単なる自己満足広告ではない
はてさて、
一方の2だが、こちらはまったく指摘通りだ。さすがに何億もの大金を自己満足だけのために捨てるようなことはしないだろうが、それにしてもこの「内容のワケのわからなさ」は嫌悪感を感じてしまうほどひどい。ある程度携帯電話業界に詳しければ「ああ、MNPで散々ひとり負けとか言われてきたから反撃に出るんだな」ということが分かるが、テレビCMを見た人でそこまで一瞬で理解できる人はあまり多くないだろう。ひとり負けだとかW-CDMAとか一切理解しないで使ってる人の方が圧倒的に多くて、そうした人たちにとっては「最近auは元気いいけど、ドコモは変わらないね」ぐらいの意識かも知れない。だから、あえてテイザー広告なんて打って企業同士の合戦をプロモーションする意味はない。
じゃあこの広告は本当に自己満足なのか。
大前研一氏の言うように、この広告はたしかにコンシューマの方を向いていない。しかし、だからといってこの広告に価値がないわけではない。広告はしばしば、コンシューマの方を向かないこともある。
たとえばキリンビールが発売している「のどごし生」のCMには、通常のビール風飲料CMにありがちなゴクゴク飲むシーンがない。いや、あるにはあるのだが必ずしも前面に出していない。スーパーの酒売場で山口智充演じる販売員が大量の「のどごし生」のケースに囲まれ、声を張り上げて商品を売るだけだ。このCMはコンシューマにうまさをあまりアピールしていない。店頭での売れ行きの良さと商品名を印象づけることだけに目的を絞っている。つまり、商品の良さを伝えることだけが広告ではないのだ。
そしてこの「のどごし生」のCMにはもう一つの意味が込められている。店頭で実際に商品を売る人のモチベーションアップだ。販売員にスポットライトを当てることで、CMの活気を現実のものにしてしまう。外に対するアピールではなく、内に対する激励として広告を使っている。大手飲料会社ともなれば配送から販売まで全国何万人もの手を介すことになり、最終的に店頭でどのように売られるかによって全体の売れ行きが大きく変わる。この広告はそこに着目した見事なキャンペーンと言える。
ドコモも同じだ。全国2000店以上の代理店と、全国各地の量販店カウンターの販売員によって支えられている。今回の「DoCoMo 2.0」広告は彼らへの激励の意味が込められているのだと思う。「また新しいサービスやるから、みんなしっかり売ってくれよ」と。ドコモは今回のイメージCMのほかにもドコモショップのCMを流している。このCMの主役は店頭の販売員だ。どうやら「DoCoMo 2.0」に限らず今期のドコモは、ドコモ関係者のためにドコモ内部にスポットライトを当てようとしているらしい。
だから、別に広告がコンシューマの方を向いていないからって目くじらを立てることはない。たしかに、このままずっとコンシューマの方を向かなくなってしまうのであればそれは問題だが、今回のキャンペーンについては一時的なものとして見ておいた方が良いのかも知れない。
ただ、ここまで余計な嫌悪感を感じさせるキャッチコピー(そろそろ反撃~)にした理由はよくわからない。こればかりは誤算か、あるいはまだ明らかにされていない次の一手があるのかもしれない。
言葉のインパクトに踊らされないように
今回の「DoCoMo 2.0」の意味は「ちょっとここらで心機一転してみんなでがんばるよー」程度に見ておくのがいい。パラダイムシフトでも何でもないし、挑発こそすれ宣戦布告でもない。2.0というのだからもっと斬新なサービスが登場して然るべきだ! とかいうのも的はずれだ。Web 2.0だってものすごい衝撃が突然来たんじゃなくて、すでにあちこちに出現していた変化に後付けで名前をつけただけでしょ?
それから、関係者から見れば今回の「2in1」とかは本当に度肝を抜くサービスだ。他社では容易に真似できない、と言うのはまったくその通り。ひとり負けとか言われながらもドコモは相変わらず巨人であって、極論を言えばMNPひとり負けは「誤差の範囲内」だ。顧客満足度で他社に大きく引き離されることさえなければ、ドコモは今のままで存続する。「そろそろ反撃してもいいですか?」というしたたかな喧嘩の売り方は、有りあまる余裕の現れなのだ。まあ、傲慢さは多少鼻につくが、ユーザとしては特に困りはしない。
ドコモに勝てる事業者は、今のところまだ登場していない。