門外漢だけどマンション管理費滞納率の統計分析がおかしかったので検証してみたよ

2014年5月12日

「マンション総合調査結果報告書」にみるスラム化の兆候
http://blogos.com/article/85478/

この記事を見てて、なんか統計値の使い方に違和感を感じたので原典にあたって検証してみた。
結論から言うと、この記事の分析はおかしい。
この記事は、国土交通省が実施したマンション管理の実態調査アンケートの集計結果をかいつまんで紹介している。内容は特段驚くべきこともなくて、規模が大きい分譲マンションの方が修繕積立金高いよね、とか、集合住宅化が進むとトラブルの件数増えるよね、とか「ふーん」で終わる感じのもの。
ただこの2ページ目、「マンションの規模が大きいほど滞納率が高い」という見出しのところがちょっとおかしい。直感的に考えて、規模の大小にかかわらず滞納率って一定なんじゃないの、と私は考えたけどどうやらそうではないらしい。

滞納住戸が「ある」マンションの割合
驚くべきことにマンションの規模が大きくなるほど、滞納住戸が「ある」マンションの割合が高くなる傾向がある。
また、総戸数300超の大規模マンションは、「1年以上」の滞納住戸が「ある」マンションの割合が跳ね上がるのも大きな特徴だ。

やばいよやばいよ。大規模になればなるほど滞納率が高いって、巨大マンション群の破綻可能性が高いってことじゃん。治安と地価に直結する問題なんじゃねーの。都内某所とかみたいに町まるごとゴーストタウンが続出する未来が見えるよ!
…と思ってよく見たら、カテゴリ分けの分布が違うのね。「21戸~30戸」の次が「31~50戸」。等間隔な区分けになってない。かといって対数でもない。
というわけで、原点からデータ引っこ抜いてグラフを作り直してみた。集計そのものが等間隔じゃないので、規模のカテゴリの最小値(たとえば20戸以下なら0、21~30戸なら21)を仮の値として散布図を作ってみた。
管理費・修繕積立金の滞納があるマンションの割合
見ての通り、違う形のカーブになりました。もし滞納率が規模に関係なく一定ならこのグラフは右上がりの直線になるはず(あるいは確率分布を考えると100%に限りなく近づく曲線になる?)なので、規模に応じた有意な差はなさそうだ、という結論になります。
念のため断わっておくと、この数字は「滞納が1戸以上存在するマンションの割合」なので規模が大きければ大きいほど100%に近づいていくのは当たり前です。

なんで門外漢なのにこんな問題気にしてんの?

今朝マンションに入ってた広告なんだけど、こんな爽やかに笑ってる場合じゃない年収だろ……
https://twitter.com/GakuyoSonoda/status/462419726421860352

BmrYSVRCEAAaJAI
この画像を見て衝撃を受けまして、そろそろサブプライム的に危ない段階に来てるんじゃないのかなといろいろ見てたわけです。こんな人でも臆せずマンション買ってるとすると(実際にはそう居ないと信じたいですが)、全体として不動産のリスクって結構ひどいことになっているのでは…とあれこれ妄想を膨らませております。
あとはまあ、たまには時間のある時にネット上の記事の原典に当たって自分で検証するというのはよい訓練になると思います。国土交通省のPDFがクソだということも分かりました(紙資料のスキャンだけでcsvがない、OCR読み取りもしてないので全文検索できない、複数PDFに分かれている割にPDFごとの見出しが稚拙)し、Googleスプレッドシートで簡単に無料でグラフが作れるということも分かりました。
ちなみに不動産事情については門外漢なので、この指摘が的外れかもしれませんよ、と最後に言い訳しておきます。この元記事がなければ調査結果の存在自体知らなかったので、元記事には感謝しています。

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