VALUEDOMAINのDynamicDNSを自動で更新する(PowerShell編)

2014年4月25日

ただのコピー記事だけど、自分用メモとして。
やりたいこと
・自宅サーバのIPアドレスが固定じゃないので、変更を検知してDNSレコードを随時更新したい
・自宅サーバはWin32環境(WS2008R2)、DNSサーバはVALUEDOMAINを使用
Win32ならDiCE使えって話だけど、このページのスクリプトを使ってみた。DiCE有料版でサービス使わなくてもログオフ状態で更新できるよ。
POWERSHELL スクリプトで VALUE-DOMAIN の DDNS を更新
http://awoni.net/blog/2009/10/362/

導入方法

(※Windows Server 2008 R2で確認)
まずはこのファイルをローカルのどこかに置いて、14行目までを自由にカスタマイズ。

ddnsupdate.ps1

# ドメイン名
$DOMAIN = "example.com"
# パスワード
$PASS = "password"
# サブドメイン名 すべての場合は*
$HOSTNAME = "targetserver"
# IP アドレスを取得するページのURL
$IP_URL = "http://example.com/getremoteaddress.php"
# Value-Domain のDDNSサーバの登録ページのURL
$DDNS_URL = "http://dyn.value-domain.com/cgi-bin/dyn.fcg?"
# ログファイルを保存するディレクトリ
$DATAPATH = "C:\path\to\"
$IP_FILE = "old_ip.txt"
$LOG = "log.txt"
# ログの出力
function write_log($message)
{
    $now = Get-Date;
    Add-Content ($DATAPATH + $LOG) ($now.ToString("yyyy/MM/dd HH:mm:ss") + " " + $message)
}
# 記録しているIPアドレスの取得
if (Test-Path ($DATAPATH + $IP_FILE))
{
    $old_ip = Get-Content ($DATAPATH + $IP_FILE)
}
else
{
    $old_ip = "0.0.0.0"
}
echo $old_ip
# IPアドレスの取得
$wc = New-Object System.Net.WebClient
try
{
    $new_ip = $wc.DownloadString($IP_URL)
    $wc.Close;
}
catch
{
    write_log("11:IPアドレスが取得できません。")
    try
    {
        $new_ip = $wc.DownloadString($DDNS_URL + "ip")
        $wc.Close;
    }
    catch
    {
        write_log("12:IPアドレスが取得できません。")
        echo "12:IPアドレスが取得できません。"
        return;
    }
}
echo $new_ip
if ($old_ip -eq $new_ip)
{
    write_log("00:IPアドレスの変更がありません")
    echo "00:IPアドレスの変更がありません"
}
else
{
    # アドレスが変更されている場合にVALUE-DOMAINのDDNSサーバーの更新
    $wc = New-Object System.Net.WebClient
    try
    {
        $status = $wc.DownloadString($DDNS_URL + "d=" + $DOMAIN + "&p=" + $PASS + "&h=" + $HOSTNAME)
        echo $status
    }
    catch
    {
        write_log("12:サーバに接続できません。")
    }
    $st = $status.Split("`n")
    if ($st[0] -eq "status=0")
    {
        Set-Content ($DATAPATH + $IP_FILE) $new_ip
        write_log("0:OK IP:" + $new_ip)
    }
    else
    {
        write_log($st[0] + ":" + $st[1])
    }
}

[DOWNLOAD]
(※ダウンロード後に拡張子をtxtからps1に変更して下さい)
設定について少し解説。

# ドメイン名
$DOMAIN = "example.com"
# パスワード
$PASS = "password"
# サブドメイン名 すべての場合は*
$HOSTNAME = "targetserver"

これらはVALUEDOMAINで使っているものを入力。

# IP アドレスを取得するページのURL
$IP_URL = "http://example.com/getremoteaddress.php"

IP_URLはリモートアドレスを取得できるURLを入力。
巷にはいくつかあるが、ひとまず自前で用意。

getremoteaddress.php


3行だけ。このgetremoteaddress.phpを任意のリモートサーバに置く。アクセス可能な場所なら自宅サーバでなくても良い。別にリモートホスト取得できてHTTPで返却さえできればPHPでなくても良い。

# ログファイルを保存するディレクトリ
$DATAPATH = "C:\path\to\"
$IP_FILE = "old_ip.txt"
$LOG = "log.txt"

このあたりはローカルの問題なのでお好みで。
設定完了したら右クリック→「PowerShellで実行」してみて動くかどうか確認。たぶん初期状態だと署名を求められて動かない。
そんな時は管理者権限でWindows PowerShellを実行して、以下コマンドを実行。

> Set-ExecutionPolicy Unrestricted

powershell1
やばげなメッセージが出るので、セキュリティリスクを受け入れてもいい人は「Y」を入力。自己責任でやっちゃえない人は回れ右しましょう。
再度実行してみて、ps1ファイルと同じディレクトリにログファイル(log.txt)とIPアドレスメモ(old_ip.txt)が置かれたらちゃんと動いた証。実行時刻と「0:OK」が記録されていれば更新成功。
あとはタスクスケジューラにでも登録して、バックグラウンド更新させましょう。
powershell2
実行するスクリプトは「C:\Windows\System32\WindowsPowerShell\v1.0\powershell.exe」で、引数として「-c C:\path\to\ddnsupdate.ps1」などとフルパスでファイル名を指定してやればOK。

参考

POWERSHELL スクリプトで VALUE-DOMAIN の DDNS を更新 – Webアプリ作成日記
WSH/サンプル/DDNS更新スクリプト – jomura.net

BluetoothとiTunesで作る快適オーディオ環境

2014年4月23日

新しくデジタルアンプを買って、私にとって理想的なオーディオ環境が整ったので晒してみる。

オーディオネットワーク構成図
オーディオネットワーク構成図

ポイント

  • PCで再生しようがタブレットで再生しようがすべてスピーカー出力
  • 音楽ライブラリはすべてiTunes上にある
  • TVを試聴する場合はNexus7からnasneへ接続し、音はBluetoothでアンプへ飛ばす
  • 常時稼働のサーバ上でiTunesを動かしておき、PCで再生したい場合はホームシェアリング機能で転送し、音はUSBでアンプへ飛ばす
  • 外出時などサーバが使えない場合はiPhoneにインポートしてある音楽ライブラリから聴く。音はBluetoothでアンプへ飛ばす

PCもiPhoneもタブレットもすべての音声をスピーカーから出力したい……という理想を実現したらこうなった。過去にはアクティブスピーカーに無理やりアナログ線を多重接続してTVとPCの両出力対応させたり、別のアンプを買ってiPhoneからAirplayで飛ばしたり様々な苦労を重ねて試行錯誤することになった。

TEAC AI-301DA
TEAC AI-301DA

このデジタルアンプ、TEAC AI-301DAはとても気に入っている。現在発売されているUSB DAC兼プリメインアンプの中でBluetoothに対応しているのはこれぐらいしかない(中華系にあるにはあるがあまり流通してないようだ)。そもそもアンプやネットワークプレーヤーにワイヤレスでデータを飛ばすという発想をしているのがTEACぐらいしかない。他社はせいぜいAirplayをオマケに付けているか、単体アンプじゃなくてBluetoothスピーカーにしてしまうか、「Bluetooth使いたいなら別売りレシーバーあるから勝手にしろやオラ」みたいな姿勢らしい。そうじゃないんだ。別売りレシーバー増えたら電源管理が面倒になるからオールインワンがいいんだよ。Bluetoothオンにして、アンプの電源入れて、レシーバーの電源入れて……とかいちいち面倒くさいでしょ。
その点、このAI-301DAはBluetoothクライアントが再接続すれば自動検知してスリープ復帰してくれるし、PCの電源を入れればUSB接続を自動検知してスリープ復帰してくれる。話の分かるやつだ。
(Bluetoothはペアリングの問題で同一デバイスでないと自動検知してくれない。後述)
おまけにこいつはとても小さい。AVアンプやデジタルアンプはどれも両手で持たなければいけないほどデカいのだけど、これは片手でひょいと持ち上げられるサイズ。重量も2kg程度と軽いので、うちではミドルタワーデスクトップPCの上に置いている。
この構成で不満がある点は2つ。
1つめはBluetoothのペアリングを一対多で共存させることができない。Macbook Airで音楽再生した後にベッドに寝転んでTVでも見ようとすると、Macbook Air⇔アンプ間のペアリングをNexus7⇔アンプ間のペアリングに変更しないといけない。新たなペアリングを探索するにはアンプ本体側のボタンを押せばいいのでたいした手間じゃないといえばそうなんだけど、できればAirplayのように、クライアント側の操作だけでリモートで上書きペアリングして欲しいところ。おそらくBluetoothの仕様による制限なのだろうけども。
上記の問題のため、一旦ペアリングしたデバイスでないとスリープ状態から自動復帰してくれない。スリープ状態時に別デバイスを使いたい場合は手動でスリープ復帰させて手動でペアリングし直す必要がある。
ちなみにBluetoothの代わりにAirplayを活用するというワザもあるけど、Airplayは遅延がひどい。平均1秒、ひどいときで2秒くらい遅れる。音楽を流す分には問題ないんだけど、Macbook AirでYouTube見ながら音だけアンプに飛ばしてみるとまともに楽しめないほど遅れる。間にワイヤレスルータ1個挟んでるだけなんだけどな。その点、Bluetoothはそういう使い方をしてもひどい遅延だと感じることはない。
そんなわけでうちには不要になったAirplay/DLNA対応アンプ、TEAC NP-H750があるんだけど誰か買い取りませんか。
不満点2つめは複数インプットのミックスをしてくれない点。これはデジタル入出力なのとミキサーがないため仕方ない。例えばデスクトップPCでゲームしながらMacbook Airで音楽も流す、ということが同時にできない。これはわざわざ分ける必要もないので、デスクトップPC側で音楽再生して内部でミックスさせればよいだけの話だけど、できたら自由度上がるのになー、という意見。
そんな不満はありつつも、PCだろうがタブレットだろうがスマホだろうが関係なく、快適なスピーカーで音楽を楽しめる環境になったので嬉しい。ひとまずNexus7やiPhoneの本体スピーカー等でシャカシャカした不快な音を聴く状況からは逃げることができた。
音源⇔アンプ間をデジタルで統一することにこだわってみたのだけど、いざ導入してみるとそこまで聞き分けられるほど耳が良くなかったらしく、アナログ接続時代からの音質向上を実感することはなかった。最終的に使い勝手がよくなったからいいんだけどね。

2台持ちの私がドコモ新プランに変えてみると

2014年4月22日

ドコモ新プラン アイキャッチ
新たな料金プランおよび割引サービスを提供開始 NTTドコモ
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2014/04/10_00.html

先日発表されたドコモの新料金でシミュレーションした。
参考までに晒してみる。

現在のプラン

  • 通話用・データ通信用の2台持ち(ガラケー+iPhone)
  • ドコモ継続期間は1台目:12年(ガラケー)。2台目:1年未満(iPhone)
  • 1台目はXi契約だが、実際はガラケー使用のためほぼ通信しない(Suicaチャージ程度)
  • 通話は大体ドコモ間で収まっているため通話料はほぼ無し。発信時は050plusを活用
Xi契約 with ガラケー
(通話・おサイフケータイ用)
タイプXi にねん 743
Xiパケ・ホーダイ ダブル 2000
Xiカケ・ホーダイ 667
SPモード 300
留守番電話 300
月々サポート -1800
ご愛顧10年Xiスマホ割 -400
ユニバーサルサービス料 3
eビリング -20
消費税(8%) 143
合計 1936
iPhone 5S
(データ通信・050plus用)
タイプXi にねん 743
Xiパケ・ホーダイ for iPhone 5200
SPモード 300
月々サポート -3000
ドコモへスイッチ割 -743
ユニバーサルサービス料 3
eビリング -20
消費税(8%) 198
合計 2681

2台の合計金額:4617円

新プラン

  • 言うほど安くならない。むしろトントン
  • そのわりにデータ通信の上限額は7GB→2GBに減
  • 同一名義複数回線だと高額なシェアパックでなく、割安なデータSパック+2台目シェアという方法がある
  • カケホーダイにより050plusを使う必要がなくなるので、移行すればこの金額からさらに300〜400円ほど節約可能
Xi契約 with ガラケー
(通話・おサイフケータイ用)
カケホーダイプラン 2700
シェアオプション 500
SPモード 300
留守番電話 300
月々サポート -1800
ご愛顧10年Xiスマホ割 -400
ユニバーサルサービス料 3
eビリング -20
消費税(8%) 126
合計 1709
iPhone 5S
(データ通信・050plus用)
カケホーダイプラン 2700
データSパック 3500
SPモード 300
月々サポート -3000
ドコモへスイッチ割 -743
ユニバーサルサービス料 3
eビリング -20
消費税(8%) 219
合計 2959

2台の合計金額:4668円
(※プラン変更や機種変更すると割引金額は変わると思われるが、比較のため変わらないものとした)

結論

別に好んで変更する必要はなさそう。

生きる意味と食べる楽しみ

2014年4月21日

先日、健康問題が不安視されていたある知人の近況を人づてに聞いた。
どうやらドクターストップにより食べる楽しみを失ってしまったらしい。
それを聞いたとき、食べる楽しみが奪われるなんて自分だったら死んじゃう! ……なんて思わず言ってしまったけども、冷静に考えてみるとまあそんな楽しみがないならないで意外と人生楽しめるんじゃないのかな、とも思ってみたり。手放すには惜しいけど、いざ手放しちゃったらそれはそれで諦めがつくというか。実際どうなのか分からないけども。
さて、いまの私にとって食べる楽しみとは人生の楽しみの九割九分を占めるといっても過言ではなく、毎日毎日あれが食べたいこれが食べたいなどと考えながら、わりと好きなものを好きなように食べて暮らしている。最近はちょっと健康に気を遣うようになってきたけど、それでも所与の条件でいかに美味しくするかということに知恵の絞り甲斐がある。
そんな私がもしドクターストップで限られたものしか食べられなくなったら、たぶんしばらく生きる意味を無くすだろう。食べたい物を食べられないのは生き地獄だ。自分が食べられない事実はまだいいとして、目の前で普通の人が自分の食べられないものを普通に食ってる姿を見せられるのが地獄だ。そんなものを見せられて正気でいる自信がない。睨み付け、罵倒し、飛びかかり、その食っている皿を放り投げ、叩きつけ、顔中ボコボコにしても足りない。食っている姿が見えずとも匂いだけで喉をかきむしり奇声を上げて気絶するだろう。
さらにテレビ、ラジオ、雑誌、インターネット、メディアは食べ物飲み物の広告だらけだ。街中の自動販売機、パン屋、スーパー、居酒屋、ラーメンの屋台、すべてのものが悪魔に見えるに違いない。四六時中そんな悪魔に囲まれているというのは想像しただけで頭がおかしくなる。アポロに乗って前世紀のチューブ型宇宙食しかない世界にでもいけば多少はマシかもしれない。
とは言うものの、ドクターストップがかかった以上は命を縮めてまで食べたいものを食べたいとは思わない。私だって命が惜しい。長期的に(生活習慣病などで)命を縮めるならまだしも、医者が今すぐ止めろというのを無視するほど馬鹿ではない。先日、健康上の理由で一時的に禁酒してみた。初めのうちは楽しみが奪われるというストレスがあったものの、しばらくするとその状況にも慣れ、回避の仕方やストレスの緩和策なども身につくようになった。飲酒と飲食では必要度合いがまったく異なるが、楽しみという意味ではおそらく同様に慣れていくのかもしれない。
医者を必要としない程度に健康でありたいものです。

アルベルトおじさんの恐怖

2014年4月20日

アルベルトおじさんは人にいちゃもんを付けることを日課にしている。
アルベルトおじさんは不思議な存在で、どこからともなく現れる。たとえば学術的な会議に現れる。アルベルトおじさんは主流派の意見を認めない。人の意見にあらゆる反例を見つけてくる。「地球は太陽の周りを回っている」なんていう誰もが認めている事実も、おじさんにかかれば「そんなものは事実ではない。私は認めない」となってしまう。アルベルトおじさんは時には孤独な存在だが、時には大勢の味方を連れてくることがある。「人類は猿から進化した」なんていう進化論も、宗教団体を呼んできて「そんなもの私は認めない」となってしまう。
学術的な会議のほか、アルベルトおじさんは政治の場にも現れる。たとえばある政策の実施可否について社会的な統計データを持ち出せば「それを覆すデータがある」とか「そのデータは意味をなさない」とか「私の経験的には…」とかいろいろといちゃもんをつける。またあるときは裁判所にも現れる。証拠として不十分とか、責任能力がないとか、立証する意味がないとか、いろいろ難癖をつけて人のいうことを認めようとしない。
ときには人々がアルベルトおじさんの言い分に耳を傾けることもある。アルベルトおじさんの主張したことが教科書に載ることもある。しかしその時はすでに別のおじさんが現れて、またいちゃもんをつける。
アルベルトおじさんは神出鬼没だ。アルベルトおじさんは世の中の多数の人から疎まれる存在だ。でも、アルベルトおじさんはへこたれない。そして、アルベルトおじさんは長い歴史の中で大きな貢献をしてきた。アルベルトおじさんが居ずに世の中は成り立たない。議論をかき回す存在がいなければ、人間の目というものは曇ったままだからだ。

オカルト理論に反論する大槻教授
オカルト理論に反論する大槻教授(画像はイメージです)

世の中には「事実」と「真実」があるとよく言われる。事実は主観的で相対的。真実は客観的で絶対的。しかし「真実」などというものはこの世のどこにも存在しない。アルベルトおじさんはそのことを私たちに分からせてくれる。
「地球は太陽の周りを回っている」という学説がある。というか、もはや教科書に載るほどの定説で、誰もがこの事実に同意し、これが事実であることを前提にして世の中は回っている。となると、この学説は「真実」だろうか。残念ながらそうではない。仮に、すべての人が一人残らずこの学説に同意したとしよう。そして、未来永劫、人類のいる限りすべての人がこの学説を事実だと認め、信じたとしよう。そうすれば、「真実」と言っていいかもしれない。なぜならすべての人間の持つすべての認識の中でこの学説は「真」になるからだ。
ところが、実際にはそんなことはあり得ない。誰もが頷ける事実だったとしても、いちゃもんを付ける人が一人でもいると、それは「ただの学説の一つ」になってしまう。対立する別の学説がある限り、学説は真実になることはない。そして、人類が2人以上いる限り、すべての人間の意見が一致することはない。どのような意見にも、アルベルトおじさんは反論してくる。対立する仮説を持ち出してくる。「それは事実ではない」と疑ってくる。
STAP細胞だってそうだ。その存在を示した論文に対して「本当かな?」と疑いの目を持った全世界のアルベルトおじさんたちが、実際に試してみて疑いを指摘している。
(加えて門外漢のアルベルトおじさんたちも、有ること無いこと挙げていちゃもんをつけているけども)
科学の進歩というのは、そういうことを繰り返して繰り返してここまでやってきた。つまり、ある説に対して別の説があることを認め、客観的に立証する方法を提供し、それに沿って矛盾のない説明ができれば、おおよそ「客観的に見て真実の可能性が高い」と判定する。ある説について対立する説を一切認めなければ、それは宗教になってしまう。
アルベルトおじさんは面倒な存在だ。しかし、アルベルトおじさんはたくさんの議論の足切りをしてくれる。盲目な私たちに新たな視点を与えてくれる。アルベルトおじさんの存在があるからこそ、ときには相手にする価値もないような意見や、たくさんの不毛な議論に身構えることができる。気にせず通り過ぎることができる。無駄な労力を使わなくてすむ。
そんなみんなの嫌われ者、アルベルトおじさん。
ありがとう。アルベルトおじさん。
そして、これからも永遠に。

おまじない信仰——癌、タバコ、放射線

2014年4月17日

空飛ぶスパゲティモンスター教(画像はイメージです)

「おまじない」は何のためにあるのだろうか。
それは心の安定を得るためにある。「おまじないしたから大丈夫」という気休めが人をほっとさせる。これは信仰の一種であり、「いたいのいたいのとんでいけ」は1秒でできるインスタント宗教といえる。また星座占いや血液型占いといったものも同様にインスタント宗教だ。古来から人類はそういった根拠に乏しい取り決めや思考ロジックを合理的な思考判断の中に取り入れて、自分の思考の範疇に収まらないものを一定のブラックボックスとして折り合いを付け、擬似的な安心を得てきた。
だからおまじないを信じているだとか信じていないだとかで宗教戦争をしても意味がなくて、誰もが程度の差こそあれ何かを信仰し、あるいは定常的な信仰を持たなくても危機に際しては何か超越的なものを空想し、論理的ではない考え方をする。もしも宗教やしきたり、ジンクスといった心の決めごとがない状態では、人間はいちいち見るもの聞くもの感じるものすべてに対して何らかの答えを得ようとして多大なコストを払わないといけない。そういったものをある程度のところでとどまらせるための、現実を深追いしすぎないための思考パッケージが「信仰」であり「気休め」であり「おまじない」である。
人は不安や恐怖がある限り「おまじない」を必要とする。そのために古来から宗教が作られ、祭りが催され、ビルには穴が空き、店先にはタヌキ像が置かれ、泉にはコインがたまり、風邪を引けばチキンスープを食べ、携帯ストラップ型の電磁波除去シートが売れまくる。お布施、お賽銭、縁起物の商品、手相診断、いろいろなところでおまじない産業とその市場を見ることができる。しかしこれは精神衛生の維持や生活習慣の維持のために存在しているもので、それに費やすべきコストというものは人によって程度がある。不治の病に冒された人にとってはそれに支払いたいと考えるコストは高額になり、死や病気とは縁遠い若年者にとっては少額になる。それは医療保険や生命保険のように、抱えているリスクによって増減する。
個人的には「この世の中はそういったコストを払う必要がない人にも過剰におまじないを売りつける傾向がある」という疑いを持っていて、アルカリイオン水とかナノイー理論とか、電磁波除去シートとかの怪しげなマイノリティな理論はできるだけ信用しないことにしている。かといって一律信用しないということもなくて、東洋医学や電磁波の健康被害、一部の発がん性が疑われる物質についてはリスクとコストを勘案して、マイノリティな理論であっても少し信用するところもある。そういった「どれを信用し、どれを信用しないか」の選択は個人の問題で、人に押しつけるべきではない。が、どうも世にはおまじない産業がはびこりすぎだと思っている。
信仰についてよく引き合いに出される新興宗教(ここでは特に70年代~80年代に社会問題となった最後発宗教のことを指す)が人生を陥れるというのは多分に問題だけれども、その一方で怪しげなマイノリティな理論が世の中にはびこって、必要の無い不安がばらまかれて、本来は心の安定にそれほどコストを払う必要がない大勢の人がコストを払うようになるというところが、社会全体としてみると地味に損失なのではないかと思う。
もしも死の不安に取り憑かれた人が財産の大部分を費やして壺や掛け軸を買おうとする時、そこには真っ当な理由がある。死の不安が目前に迫っているからだ。溺れる者は藁だって掴む。だけど、それほどでもないような地味な不安で、たとえばタバコ吸ってる人がトランス脂肪酸の心配をしたり、飲酒運転を平気でするような人が電磁波を心配をしたり、飛行機に躊躇なく乗るような人が放射線の心配をしたり、独身者が発がん性物質の心配をしたり、高齢者が住宅のアスベストの心配をしたりってのは何か違うと思う。それは別に心配してはいけないということじゃなくて、理屈に合った程度に心配しましょうよという話。そしてそれに結構なコストと時間を取られたり、極端な話ではそういう不安だけで家庭崩壊に至ったりしているところをみると本当バカなんじゃないのと思う。お前ら、程度があるだろと。
遺伝子組み換え作物に反対するデモの様子(画像はイメージです)
遺伝子組み換え作物に反対するデモの様子(画像はイメージです)

情報流通のコストが格段に下がったことで、一つの不安が多くの人に伝わり、増幅されたり、生活や思考に影響を与えるように変わってきた。そして今は不安が供給過剰になっている。原子力発電所から遠く離れている人も汚染の心配をするし、子供のいる人は児童連れ去りの心配をするし、国民の多くが年金の心配をする。不安を煽ればみんなテレビを見るし、本を買うし、ページビューも伸びるし、怪しげな団体にお金が集まるし、グッズが売れる。そうして見えないところで巨大産業が育っていく。いろんな産業や市場に分散して目立たないけれど、人の不安による需要で飯を食う人ってのはどんどん増える。それで経済が回るのはいいことだけれど、社会全体の幸福度の総量は格段に下がっていく。皆が幸福を感じられないまま金だけが回っていく。
おまじないはあくまでおまじないだ。それで難を逃れられるかもしれないが、逃れられないかもしれない。その難を逃れられたとしても、ほかの難が待っているし、自分がどういう理由で死ぬことになるのか誰にも分からない。タバコをやめようとした人が医者に通っている途中で交通事故で死ぬかもしれないし、気休めに飲んだ健康食品が寿命を縮ませるかもしれないし、うちの爺さんなんか初詣で健康祈願してその帰りに風邪こじらせて死んでしまった。そんなことを考えるときりがない。結局どうなるのか人間には分からない。不安はあくまで可能性に依るものでしかない。
ただ、結局どうなるのか分からなくても、自分が何を信じて何に恐怖すべきかというものは選択できる。人から与えられる恐怖ではなく、自分で選択した恐怖を気にするべきだ。……といってもいちいち自分で吟味して検証していたら人生なんてあっという間に終わってしまうので、リスクを頭に入れつつ恐怖する対象を絞って、適当に折り合いを付けて、なあなあで判断するしかない。そもそも人間が生きるメカニズムさえ完全には解明されていないのだから、自分というシステムが今日もどういうわけか正常に機能し続けているという時点で奇跡のようなものだ。あまり考えすぎないのがよいのだろう。必要のない恐怖を取捨選択するということが、情報の多いこの世の中で生きていく上で欠かせないことだ。
何に恐怖し、どのような不安の物差しを持つかは結局のところ自分でコントロールできる。私たちはわけのわからない恐怖にかまっている場合ではない。