VAIO Pro 11 を半月使ってみた

2013年7月15日


(手前がVAIO Pro 11、奥側がVAIO X)
VAIO Pro 11を使い始めて半月が経ったので、購入検討中の人のために感想や気になったことなどを書いてみる。

総評

大満足。
持ち歩きのサブノートとしては究極のクオリティ。これに対抗しうるのはコストパフォーマンス最強のMacbook Airしか思いつかない。あれが足りないこれが足りないといろいろ言われているけど、削れそうなところを片っ端から削ってここまで尖らせたのはすごい。こういうことができるのはソニーか工人舎か無名の中華企業くらいじゃないだろうか。
私の使い方に非常にマッチしていて、VAIO X以来3年間こいつを待っていた! と言ってもいいほどの完成度。ただし、細かい点でチューニング不足。

購入構成

ソニーストアで以下の構成で購入。
OS:Windows 8 Pro 64bit (+5000円)
液晶:タッチパネルなし
プロセッサ:Core i5-4200U
メモリ:4GB
SSD:128GB
キーボード:英字配列 (+5000円)
最小構成にOSとキーボードをカスタマイズして、合計138,800円。
ちなみに他に使っているノートPCはVAIO X(2009年発売)とMacbook Air 13″(Mid 2011)の2つ。家で使うのはMacbook Air。処理パワーが欲しいときやゲームする時はデスクトップPC。外で何かするときはVAIO X。今回はMacook Airの用途とVAIO Xの用途を統合できないかと思って購入してみた。
なお、私はノートPCについては「軽い」ということに異常な満足感を感じる人ですので、そのあたりを割り引いて読んでいただければ幸いかと。

軽さについて

たったの770gは驚き。持ち上げようとした手が空振りするような不思議な感覚。
この軽さだけで値段の元は取れたと思った。
…といっても私はVAIO Xの軽さに慣れているので、個人的には「驚いた!」というほどではなく「おかえりなさい」という感じ。
手元にあるVAIO Xの実重量は765g。このクラスになるとタブレットと同じで、ベッド脇に置いておいて、寝転がりながら片手でヒョイとつかんでちょっといじってヒョイと戻す、といった気軽な使い方ができる。床に落としてしまっても自重で壊れる可能性がやや低く、あまり気を遣わなくてすむ。たとえば机の上をちょっとどかしたいときに、足下の壁際に立てかけておいたり(水平に置くと踏んづけちゃうからね)、ハの字に開いたまま横向きに床に置いて自立させたり(ベッドサイドでローテーブルに置くのが面倒なときによくやる)気軽にできる。万一バランスを崩しても、ぱたんと軽快に倒れるだけ。Macbook Airも同じことしてよく倒しちゃうけど、1.35kgの自重があると結構ヤバげな音がする。こういうところに気を遣わずに乱暴に扱えるのがよい。

処理性能について

必要十分。
これまでVAIO XというAtomプロセッサ+メモリ2GBの環境に3年以上耐えてきて、コンパクトさそのままに格段に性能アップしたのが嬉しい。もう嬉しすぎて号泣ものです。「メインマシンとして使うならメモリ4GB固定は云々…」なんて山ほど言われているけど、これサブノートだし。
私は書き物とかウェブブラウジングとかリモートでターミナル叩くのにしか使わないので、おそらく総使用時間のうち9割方はストレスを感じずに済む。同時起動アプリケーションは限られているし、仮想環境を走らせたいなら自宅サーバに接続するし。今まで使っていたメモリ2GB環境でどの程度使えているかが分かっているので、4GBあればもう十分。
たとえば今はEvernoteで文章書きつつ、ChromeとTwitterクライアントとリモートデスクトップ立ち上げた状態でメモリ使用量が3.3GB。これ以上同時に使うことも無いので、あまり不快には感じない。

バッテリーについて

使用状況による個人差が大きいのであまり定量的なことは言えないけど、コーヒーショップをはしごしながら一日だらだら使っていてももった。常時ウェブブラウジングしながらだとキツいかもしれない。
VAIO Xと違ってVAIO Proのバッテリーは着脱不可。これまでVAIO Xを3年以上使ってきて、バッテリーを外さないといけない場面なんて皆無だったので気にならない。バッテリーの持ちがよくなったので、80%程度で充電を終わらせる「いたわり充電モード」をONにして使っている。

タッチパッドについて

普通。
だけど、Macbook Airだとかなりスムーズな動きをするので、それに慣れてしまった人はかなりイライラするだろう。二本指スクロールが引っ掛かる。三本指ジェスチャーを認識しない。アプリによってスクロールの速さがまちまち。タップエリアが狭い(調節可能)。二本指でのドラッグアンドドロップを認識しない。などなど。まあ、VAIO Xでは二本指スクロールすらできなかったので、この進化は嬉しい。

液晶について

フルHDは美しいけど、動画編集したりとかのシビアな使い方をしないのであまり重視していない。それより、Ultrabookというラベルを捨ててでもタッチパネル無しモデルを用意したのはよい判断だったと思う。私なら100g削れるなら喜んで捨てる。クラムシェル型ノートPCでいちいち画面に手を伸ばすということに合理性を感じないし。
タッチパッドがかなりアホなので補助的にあったらいいかもなーと思うことはあるが、そんなことくらいで1割以上重くなるのならタッチパッドのドライバ改善を待った方がマシに思える。いつになるか分からないけど。
11インチという画面サイズはVAIO Xで慣れているのでそれほど困らない。手元にあるMacbook Air 13″を見れば画面が広いと使いやすいというのは理解している。私にとっては妥協できるラインなので軽さを重視して11インチにした。とにかく700g台のマシンが欲しかったのです。

インタフェースその他のスペックについて

素晴らしいまでの削りっぷり。
USB端子×2、HDMI端子、イヤホン端子、SDメモリカードスロット、これだけ。
本当に潔い。VAIO XはこれにプラスしてメモリースティックスロットとEthernet端子があり、HDMI端子の代わりにVGA端子があった。それを考えるとかなり思い切ったと言える。Ethernet端子を電源直付けの無線LANアダプタで代替するという救済策には恐れ入った。私のように無線LANでしか使う気のない人に強制せず、別売りで用意したのも好感が持てる。「削るだけ削ったんで、要る人だけ工夫してください」的なスタンス。この調子でプリインストールアプリもがんがん減らしていって頂きたい。
VAIO Xに付いていた無線WAN(内蔵FOMA/WiMAXデータカード)が無くなっているのは妥当な判断だと思う。今は出先ならスマホでテザリングするのが当たり前の時代。変にWiMAXやら各種LTEキャリアに囲い込まれるよりは、削ってしまって「お手持ちの回線でどうぞ自由にお使いください」という方が合理的だ。

形状について

角が尖っているのは持ち歩き用途のノートPCとしてどうかと思う。ノートPCもタブレットも角が丸いから安心して持ち運べるというのに。
百歩譲って直角に尖っているならまだいい。しかしご丁寧にも四隅とも鋭角にしてやがる。これがちょっとしたことで体に突き刺さったりするんだ。痛いよ。

360度どこから見ても美しいデザイン、というだけのことはあって、シールやプリント類は目立たないよう配慮されている。Intelシールは本体色に合わせたのか黒いバージョンになっていて、Windows8のシールも底面の端っこに控えめに貼られてある。VAIO Xでは画面横に青いIntelシールがあり、底面にはデカデカとMicrosoftのライセンスシールが貼られていた。

(底面の比較)

キーボードについて

よく書き物やサーバいじりをするのでキーボードのフィーリングについてはかなり気にしていた。使ってみるとほぼVAIO Xと同じで、無難な感じにまとまっていて一安心。
キーピッチは17mmで、VAIO Xと同じ。アメリカ人のこだわる19mmよりはやや狭いけど、別に手が大きいわけじゃないので不満は無い。クリック感がカチカチしているところもVAIO X譲り。英字配列で使っているので変に狭いキーに悩まされることもない。
個人的な好みで矢印キーのエリアが明確に区別されているところが気に入っている。どういうことかというと、矢印キーが凸字型に配置された右上・左上部分がきちんと空き地になっているのだ。VAIO XではShiftキーやFanctionキーの間を押しのけるように矢印が配置されているので、手探りで押しづらくタイプミスが多かった。

レビューでよく言われている「キーボードがたわむ」という事象。発売前にソニービルで実機確認した限りではかなりたわんでいた。あまりにたわみすぎてキータッチがへにゃへにゃしていて「ダメだこりゃ」と諦めるくらいのひどさ。
でも、手元にある製品はほとんどたわまない。出荷前に調整が入ったか、もともと個体差があるのかもしれない。
実際、強く押してみると大きくたわむのは事実だ。でもそんなに強く押す場面などないだろう。普通にタイプしている時も多少たわんでいるようには見えるが、タイプ時のフィーリングを損ねるほどではない。そのうち忘れてしまうくらいの微々たるものだ。タイプするときの力は人それぞれなので、感じ方に個人差はあるかもしれない。
CapslockにCtrlを割り当てて使っている。そうするとなぜかCtrl(実際はCapslockキー)+Shift+Tabが機能しない。Capslockが3キー同時押しに対応してないんじゃないの? と思ったけど、Ctrl+Alt+Deleteはきちんと利く。Fedora入れた人が普通に使えているという報告もあり、OSが疑わしい。

ファンの音について

ファン音が気になるという意見が多い。個人的には、どの程度の負荷でどの程度回るかの特性がノートPCによってばらつきがあり、それが自分の使用シーンに合うか合わないかによって評価が180度変わると思っている。
例えば、VAIO Xはある程度負荷をかけないとファンが回らない。負荷が低ければ無音だ。でも元のスペックが低いため、ブラウザでいくつもウィンドウを開くと簡単に負荷が上がって轟音が鳴る。ものすごい風切り音がする。図書館で開いていたらきっと気になるレベルだろう。同じくMacbook Airも負荷が低ければ無音で、いったん回り出すと轟音だ。でもこちらは元のスペックがそこそこ高いのでブラウザごときでは回らない。動画再生してようやく回り始める。私はMacbook Airでそれほど負荷のある作業をしないので、いくら轟音でも私にとっては無音PCだ。高負荷時に轟音が鳴るのは当たり前のことだと思っているので、とやかく指摘しても仕方が無い。
ではVAIO Proはどうか。トータルで見ると静かな方だと思う。
VAIO Proも負荷をかければ轟音があがる。特に、初回起動後しばらくはずっと高負荷状態が続くのでこれが平常時の騒音かとげんなりしてしまう。さらに、一般的な音のほかに「ジジジジ」とか「チチチチ」のような、ベアリングおかしいんじゃないかと思うような音もずっと聞こえていた。このまま続くならサポートに相談しようかと思ったが、操作したりスリープしたりしながら3日経てば自然に静かになった。静かになった後もしばらくはジジジ音が継続していたが、これもいつの間にか止まっていた。
今は静音設定にしていることもあり、フルHDの動画を再生してもわずかにファンが回るだけでそれほど気にならない。轟音になるほどファンが回る場面もおそらく限られるだろう。ただ、低負荷時でもファンが回りっぱなしになっているので常時音はする。かなり耳を近づけてやっと「ジジジジ」(前述のジジジ音のような大きく不快な音ではない)という音がわずかに聞こえるくらいで、図書館で使っても気にならないレベルだ。

OSについて

これはひどい。窓から投げ捨てたくなるようなひどさ。
OSについて書こうとするとVAIO無関係なのに長文になりそうなので、別のエントリに分けることにする。
VAIOに関係する部分についてだけ触れておくと、画面の解像度制御がひどくて操作性を損なっている。
MacbookのRatinaモデルのように、UIの見栄えはそのままに単純に解像度が高くなるというのを期待していたが甘かった。解像度が高ければ高くなるほど文字が小さくなってゆく。そりゃ狭い画面にフルHD詰め込んだらドットピッチが狭くなるから当然なんだけど、これで「画面が鮮やか!」っていうのは軽く詐欺なんじゃないか。
…という批判を予想してか、UIの文字の大きさ設定はデフォルトで125%。少し大きめに調整されている。試しに100%に変えてみたところ、小っちゃ! 文字小っちゃ! 思わず老眼鏡が欲しくなるくらいの小ささ。まあ鮮やかだから読めるには読めるんだけど、初期設定でこれだったら非難囂々だったろうなあと思う。
で、この文字サイズ設定がちゃんと利いてくれるならいいんだけど、あくまでこれはOSしか面倒見てくれない。アプリも大半は連動してくれるんだけど、アプリの中にはおそらくフォントサイズがドット固定の(と思われる)ところがあって、そういうところは有無を言わさず文字が小さくなる。Evernote(デスクトップ版)のサムネイルなんか見づらくてしょうがない。フルHD画質で映像や写真をよく見る人には恩恵が大きいけど、それ以外の人にとっては衰退したUIを押しつけられるという地獄。

無線LANについて

無線LANルータとの相性問題があるようで、当たった人からは非難囂々。つながらない、つながっても通信できなくなる、突然スループットが下がる、設定を変えて回復したようにみえてまた再発する、といった報告が多数。
普及率の高いルータの一つ、NEC Aterm WR8700Nと特に相性が悪いようで、私もそれに当たってしまった一人。いろいろ試してずいぶんマシにはなったが、完全には解決していない。ドライバ側のアップデートか、ルータ側のファームウェアのアップデートを待つしかない状況だ。
セットアップ直後の症状
・通信中に突然通信できなくなる。いま掴んでいるAP以外のAPが見えず、手動切断すると一切APが見られなくなる。デバイスを再起動するかOS再起動すると治る
・スリープすると、スリープ復帰後に必ず上記症状になる
・通信中に突然速度が下がり、そのまま低速度で通信し続ける
【対策1】
接続先APを2.4GHz用→5GHz用に変更
【結果】
スリープ復帰後の症状が解決
【対策2】
Bluetoothオフ
デバイスドライバの再インストール
「SSIDをブロードキャストしていない場合でも接続する」を有効化(接続先はステルスではないが念のため)
APのチャネルを変更
【結果】
変わらず
【対策3】
デバイスマネージャのネットワークアダプタの設定から「電力の節約のために、コンピューターでこのデバイスの電源をオフにできるようにする」を無効化
【結果】
通信できなくなる頻度が下がったような気がするが、再発。突然速度が下がる症状も継続。
発生したときはデバイス再起動で治るけど、面倒なのでUSB無線LANアダプタを差してしのいでいる。なお、スマホとのテザリング時(Xperia SXとGL07Sで確認済み)には発生しない。

価格について

高い。
Macbook Air 11″ 最小構成98,800円
VAIO Pro 11 最小構成128,800円
Macbook Air 13″ 最小構成108,800円
Lavie Z 最小構成119,700円
VAIO Pro 13 最小構成138,800円
購入をためらっている人の最大のハードルはこの価格だろう。それだけの価値があると思えるなら買うべし! なんだけど、正直この価格をリーズナブルだと思う人はそんなに多くないと思う。Macbook Airのように戦略的に低価格に抑えておけば、もしかしたら天下を取れていたかもしれない。それだけのポテンシャルはある。
私自身は、軽いということにかなり満足感を覚える特異な人種なので、軽さのために素材やパーツの調達コストが上がってこの価格になっても笑って受け入れられる。もしこれが「600g台になって20万円です!」と言われたら買わないけど。
こだわりがないなら安いMacbook Air買っておけば幸せになれると思う。

よく比較されるMacbook Airについて

同じHaswell搭載の薄型ノートということでMacbook Airとよく比較されるけど、人におすすめできるのは断然Macbook Air。だって、VAIO Proはモノはいいけれど「分かる人だけ買え」って感じのとっつきにくさがあって、下手によく分からない人に勧めたら後で恨まれそうだから。いろいろとポイントを抑えて妥協できるならVAIO Pro。考えるのめんどくせーって人はMacbook Air。Windows8がお嫌いなら中古のZenbookでも買いましょう。
個人的な愚痴を言うと、VAIO Proの筐体そのままにOS Xを使いたい。OS Xのマルチタッチジェスチャーの快適さとSpacesの仮装マルチ画面がとても気に入っているので、同じことができたらなーと思う。タッチパッドが糞なのはSynaptics社の怠慢だとしても、Windows8のUIコンセプトはSpaces代替としていい線いってるんだけどなぁ。実態はひどいけど。

まとめ

迷ったらMacbook Air買っとけ。
私のような頭のおかしな人だけVAIO Proを買うといい。

3 thoughts on “VAIO Pro 11 を半月使ってみた”

  1. VAIO pro と Mac book air の購入に半年ほど悩んでいる学生です。
    レポ大変参考になりました。
    私も軽い・小さいに異様に喜ぶタイプなのでVAIOproとっても気になってるのですが、学校がMac環境なのでいまいち踏ん切りがつかず…。
    Windows8でタッチパネルなし、は実際使ってみてどうですか?
    4GBで不都合なことありますか?
    もしよかったら教えてください!

  2. コメントどうもありがとう。
    メモリは4GBで困ったことなし。仮想マシン動かすとかでなければ不都合はないかと。
    そもそもWebブラウジングと書き物専用に使っているので、アプリを切り替えることも少ないしタッチパネルがあろうがなかろうが関係ない範囲に収まっていて、タッチなしにしたことは後悔してないです。
    購入半年経過して今の私はどうなったかというと、外出時以外は中古のMacbook Air(13インチ、2011年モデル)をデスクやベッドで使うことが多いです。やはりWin8/8.1の使いにくさとMacの取っつきやすさが大きいですね。
    学校がMac環境なら1台目はMacで揃えるのが無難ですかね。「人と同じMBAじゃイヤ!軽いの持ってる俺カコイイ!」というほどでなければ我慢してWin8にする必要はないように思います。

    1. お返事ありがとうがざいます^^
      win8/8.1はやはり使いにくいのですね…
      Win機は一つ古いのを持っていので、やはり今回はMBAにしようかと思います!
      とても参考になりました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です