リングアウト・トーク

2007年5月28日

今週末はとある友人が東京に行く用事があるとかで付き合っていました。この友人というのは以前私を折紙の世界に引きずりこもうとした数学科の研究生。通称リングアウト氏。
どうやら折紙学会の第2回大会が開かれるというので行ってきたようです。場所はいつものアジト(本郷近くにある謎のテナント)。前回、内容のヘビーさに面食らった(コッホ曲線を折紙で再現するなんて!)私はちょいと遠慮しまして、終了後に神保町で合流。そのまま古書店を巡って学術書を探し回りました。

トーク内容

まあ彼が数学系ということもあり、会話の8割は数学。
(残り2割は讃岐うどん)

  • 電話でじゃんけんを成立させるには
  • じゃんけんの手が3すくみ構造でなかったら
  • 集団行動をモデル化することで安倍晴明の政治的影響力を推測できるのではないか
  • スパゲティの細密構造にはどのようなパターンが考えられるか
  • 金属結晶の細密構造は経験的に分かっているだけであって数学的に最適かどうかは証明されていないらしい
  • 「数学的」という言葉の意味とは
  • 「数学的」に考えると都営新宿線は新宿を通るとは限らない
  • 小学生にも分かりやすくリー群を解説する
  • 新提案「うどん暗号方式」

電話でじゃんけんする方法は既にマルチパーティ・プロトコルという暗号化方法があるのですが、あくまで3つの手を使う「じゃんけん」を成立させようとすると難しくなることに気がつきました。マルチパーティ・プロトコルではたしかにAとBとの間で公平に勝負が着くのですが、親子関係が発生するんですね。Aが提示したクイズをBが解いて勝負が決まるイメージ。それではじゃんけんらしくないということで代案をいろいろ考えて難癖を付けあってるうちに「直接会って決闘して白黒を決めろ」という結論に。もはや暗号理論でも情報理論でもねえ。
ボツになった代案

  • 解くのに時間のかかる問題をそれぞれ用意して中に手の情報を入れておき、十分短い時間のうちにその問題を交換して互いに解きあう(→双方の計算結果が違って両方が勝利宣言をする可能性がある)
  • AとBの間に審判員であるCを置く(→Cがグル、あるいは買収される可能性がある)
  • AとBがせーので手を伝え合う(→一瞬のタイムラグを突いて後出しじゃんけんが可能…実際のじゃんけんも同じか)
  • 互いが絶対的に影響を与えられないものについて、将来の行動を推測する(→事象によって推測可能性にばらつきがある。そもそも50%-50%の確率にできない)
  • 量子ビットを利用し、量子情報がどちらにあるかで勝負を決める(→量子ビットをどこかに設置しないといけない。双方が公平に結果を検証することが困難)
  • 量子ビットと連動させた殺人マシーンを双方に置いておき、生き残った方を勝者とする(→理論上は公平だが機器が正常に動作したことを負けた方が検証できない。謀略の可能性がある)

そもそも、どちらかが嘘をつく可能性を極限まで考えると収拾がつかないんですね。マルチパーティ・プロトコルの例にあがっていたのは素因数分解が計算量的に困難なことを利用して、Aが素数の積(たとえば5783と9857の積である57003031)を提示し、Bに対して「掛けられている2つの数字のうち、大きい方の数字の下から2桁目は偶数?奇数?(答えは奇数)」と聞く。Bは制限時間内には逆算する暇なんてないから、あてずっぽうで答える。あとは答え合わせをして、Bの答えが合っていればBの勝ちとする。この方法も、答え合わせをしてBが間違っているにも関わらず「お前の計算が間違ってる。何度計算しても私の答えの方が正しい」とか駄々をこね出したら困るわけで。
というわけで、直接会って決闘するとか、審判員Cを買収した方が勝ちとかにすれば良いんじゃないかな。(もはや数学ではない)
あと、手が3種類ではないじゃんけんは成立するかについては、フランスなどでは「井戸」を入れた4種類あるらしい(パーは井戸をふさぐので勝ち、グーチョキは井戸に落ちるので負け)という話から脱線。パワーバランスが悪いような気がするので、5種類以上に増やしたらどうなるかという話になった。結果から言えばとりあえず5種類は公平に成立する。紙に5つの点を打って、全部の点同士を結べば一つの点からは偶数本の線が引ける。だから、ある手よりも強い手と弱い手が同数あることになって公平。線を矢印に変えればいちおう検証可能。たぶん奇数ならいくらでもいけるんじゃないかな。
まあ、5種類ならグーチョキパーに加えてあと2つ手の形を考えないといけないけど。分かりやすい説明も付けて。

それにしても彼は頭おかしい。登大遊氏のよく使う意味で頭おかしい。ACではないけれど、発想が斬新すぐる。うどんで暗号化するとか素晴らしすぎる。登大遊氏のよく使う意味でこれはすばらしい。絶対に頭おかしい。
しかし、いまだに彼の素性はよく分からない。いまどこに住んでいるのかも結局分からなかった。もしかしたら放浪する数学者なのかもしれない。やっぱり頭おかしい。

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